まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』


漆黒の闇

黒猫の艶やかな黒

家族を蝕む病魔のその影

なやましいよるの屋根のうえで


萩原朔太郎が大好きですが
特にこれは
美しくて、ぞっとする。
忘れられない詩です。