観ました。

フランスの映画で、全編フランス語で、マチュー・アマルリック(大好き♪)が出ているのだけど、

始まってみると主人公の名前が「ナセル・アリ」で、
舞台がテヘランで、ちょっと戸惑った。

後から調べたら、「ベルセポリス」の作者が原著者なのですね。

なので、これはイランのお話。

かつては世界的なバイオリニストだった主人公が
奥さんに大切なバイオリンを壊されてしまい、

もう、その音色を奏でられないことに絶望して死を決めた。

その後、死を迎えるまでの8日間の物語。

ファンタジックな演出、コメディのような唐突さに、シュールさ。

変わった映画だな・・と思いながら見てて、

ずっとナレーションをしてたらしい死神が実際画面に出てきてしゃべりだしたあたりで
思わずシュールすぎて笑ってしまったけれど、

後半15分は息をのんだ。

ジブリの「紅の豚」で

少年の頃のポルコ・ロッソ(だろう)が、
同じく少女の頃のジーナを載せて、「アドリアーナ」と書かれた船を飛ばすシーンが
切なくて、大好きなのだけど

あの、記憶の底できらめくような感じに、なんか似ていた。


20年前、ナセル・アリは心の底から、美しい恋をして、

破れて、

でもその痛みゆえに、人の心を揺さぶる音楽を手に入れた。

そして、その時にはじめて「君は芸術家だ」と認めた師匠から譲り受けたバイオリンを奏でることで

愛しい人を感じ続けることができた。

その後、20年以上も。

彼女への想い、彼女を失った痛み、そのすべてが、

聴く人の心を貫くような、美しい旋律になった。

だから、そのバイオリンでなければならなかった。


そのバイオリンを失い、

死を迎える8日目には、彼女との日々の記憶だけが
鮮やかに残っていた。


到底幸せな結末とは言えないのに、

何故か、ハッピーエンドのように思えた。

凄く変わっているけど、すごく素敵な作品でした。


後半15分までに耐え切れずに寝てしまう人がいそうなのだけが心配・・・


マチュー・アマルリックは、もうやっぱり「アーティスティックなダメ男」を演じさせたら
右にでるものはいませんな。

「クリスマス・ストーリー」「Kings and Queen」につづき
そのあやうさに胸キュンしまくりです。


そして、思い続けていた女性「イラーヌ」の女優さんは、
息をのむくらいに美しかった。


彼女の美しさなしには、このラストは成立しなかったんじゃないかな。


忘れられない色彩を、心に残してくれる映画でした。